環境エンリッチメントとは?
動物園などでは、動物たちが限られた環境でも”幸せ”に暮らせるように、さまざまな工夫がおこなわれています。
そうした工夫は、「環境エンリッチメント(Environmental Enrichment)」と呼ばれます。
ここでは、その環境エンリッチメントについてご紹介します。
環境エンリッチメントってなに?
久しぶりに動物園に行ってみると、以前とは少し違うことに気がつくかもしれません。
- キリンが、首を伸ばして高い場所にひっかけられた餌を食べている。
- ホッキョクグマが、プールでプラスチックの樽を抱えて遊んでいる。
- チンパンジーが、木の枝を穴に差し込みジュースをなめている。
このような光景は、20年前はあまり見られなかった光景です。これらの取り組みが、「環境エンリッチメント」と呼ばれています。
- 室内飼いのネコなら、爪とぎの場所を作ったり、高い場所に登れるようにしたりします。
- 家畜として飼われているブタにおもちゃをあげると、攻撃的な行動や尾齧りなどの問題行動が減ったりします。
動物園の動物だけでなく、ペットや家畜、実験動物などでも「環境エンリッチメント」は取り入れられています。
環境エンリッチメントの定義
エンリッチメントは「リッチ(豊か)にすること」、という意味なので、その言葉のまま和訳すると「環境を豊かにすること」ということになります。
だた、環境エンリッチメントが言われるようになる背景には、さまざまな問題がありました。
そこで、以下のように定義されたりします。
環境エンリッチメントとは、動物福祉の立場から、飼育動物の“幸福な暮らし”を実現するための具体的な方策のこと。
つまり、人によって飼育されている動物たち(野生動物は対象外!)が”幸せ”に暮らせるように、何かをおこなうこと、と言えます。
「動物福祉の立場」Animal Welfare
「幸福な暮らし」Psychological well-being
という言葉がキーワードになります。
環境エンリッチメントの具体例
環境エンリッチメントの具体例を大まかにまとめると以下のようになります。
・より広い場所で飼う
・餌の種類を増やす
・おもちゃを与える
・群れで飼う
・窓から外を眺められるようにする など
飼育環境は、狭くて、餌が単一で、おもちゃも少なく、孤独で、風景が変わらないという問題があるため、こうした条件が当てはまることが多いですが、動物の種類や個体によって、これがかならずしも環境エンリッチメントに成るとは限りません。
正しい環境エンリッチメントは、動物の種類や年齢、性格などによっても異なります。
それぞれについては、また後日説明します。